わたし と しごと

今、がん患者の就労が問題となっています。

 

病気のことを職場に伝えると解雇された。

治療をしながら仕事の両立が困難になり辞めざるをえない。

治療中、休暇の制度がない。

配置換えを余儀なくされた。

 

色々な問題があります。

恵まれた職場であれば、病気の治療を行いながらも、今まで通り仕事をされている方もいます。

 

人に知られたくない。

職場の仲間に迷惑をかけたくない。

治療をしながら仕事をする自信がない。

 

病気がわかって、自ら仕事を辞める方もいるようです。

 

 

 

私は看護師2年目に乳がんになりました。

看護師は一般的に恵まれた職として認知されています。

社会的な制度も、お給料も、きちんと保証された職

 

ですので、私はがんになったからといって、仕事で悩んだり苦しむことはないと思っていました。

でも現実は違いました。

 

 

 

2012年9月、乳がんの告知を受け、翌月の手術に向け術前検査を行いました。

これから長いお休みをもらうので、職場のスタッフに迷惑をかけてはいけないと思い

夜勤もし、休むことなく勤務し、10月から病気休暇を申請しました。

病気休暇は3か月の期限がありましたが、病理検査の結果次第では

その期限内に職場復帰できるだろうと考えていました。

しかし、病理検査の結果“浸潤性乳管がん”だったので、抗がん剤治療を行うことになりました。

EC療法を4クール、WeeklyPTXを4クール、ハーセプチン18クール。

スケジュール通り治療が進んでも1年半は治療に時間を要します。

となると、病気休暇の3か月を越した場合、休職の申請をし、お休みをいただくことになります。

 

 

 

私の場合は、約3か月に1回、主治医に休職を要するという診断書を書いていただき申請していました。

もし、治療を行いながらでも仕事ができそうなら、早めに職場復帰しようと考えていたからです。

 

WeeklyPTXが2013年4月で無事に終わり、少し体を休めて8月から職場復帰しました。

もちろんハーセプチンは半分以上残っていたので、投与しながらの仕事です。

3週間に1回の投薬日と翌日はお休みをもらい平日5日間、夜勤免除で仕事をしました。

 

 

 

職場復帰しても夜勤免除の申請は治療中必要だったので、今までのように3か月毎に提出していました。

 

いつものように部長室に医師の診断書を提出しに行った時のことです。

私は管理職ではないので制度のことなんてあまりしらなかったので色々と尋ねてみました。

 

 

 

夜勤免除って期限はあるんですか?

 

『期限?』

 

病休とかみたいに何か月間までとかの期限です。

 

『ないわよ。そもそも夜勤免除っていうのは、主治医が客観的にみて、どれくらいの期間、

 夜勤ができないかを判断して書くわけで、あなたがしたくないからといって書いてもらえるわけじゃないの。』

 

あ・・・、はい・・・。

 

『だから私達が、いつまでとか、期限をつけることはできないの。』

『でも、あなたは、雇われてるわけだから、そのことは考えておかないといけない。』

『あなたが夜勤をしない間、あなたの代わりにしてくれてるってことなんだから、

 あなたが夜勤をしないってことは、他の人がしんどいだけなのよ。』

 

 

 

 

すごく悲しくなりました。辛くなりました。

仕事なんて辞めてしまっていればよかった。

そんな気持ちでいっぱいになり、部長室を出たとたん、涙がでました。

 

少しでもケアをしてくれた病棟スタッフに恩返しがしたい。

同じ病気で困っている患者さんの役に立ちたい。

 

そう思い、治療が終わってなかったけど、仕事に復帰しました。

でも、それが逆にみんなを苦しめていたのか。

職場復帰したのは自己満足なのか。

というより、病気になった時点で仕事を辞めた方がよかったのか。

 

治療をして心も体も辛い思いをしながら、

こんな言葉を浴びせられてまでも

この職場で働く意味があるのかな。

そこまでして、ここで働かなくてもよいのでは。

 

色んな事を考えました。

でも、今更、仕事を辞めて、治療中の私を雇ってくれる職場なんて無いだろうと思い唇をかみしめて仕事をしました。

 

 

 

 

仕事で辛い思いをした方は、私以外にもたくさんいると思います。

解雇されなかっただけ恵まれていると思います。

 

それでも、こんな言葉を浴びるとは思ってもいませんでした。

それも医療の場で。

 

働くことの大変さ。

世の中は甘くないと思いました。

 

 

 

 

それでも、その時の辛かった気持ちをバネにして、今も同じ職場で働いています。

職場復帰した初日、同じ病気の患者さんが私にかけてくれた言葉を胸に。

 

『今日から復帰してくれて、ありがとう。』