わたし vol.1

テレビやラジオで私の体験をお話しする機会が多くありました。

でもメディアを通して私自身の事を詳しくお話しするには、

限られた時間の中では足りません。

なので何回かにわけて、『わたし』について紹介させていただきますね。


わたしは2012年25才の時に乳がん患者になりました。




2012年9月。

仕事から帰って来て夕食を済まし、お風呂に入るときでした。

下着を外した後、左の胸をさわると脇の近くに硬く触れるものを感じました。

何回さわっても触れます。


血の気がひきました。

自分の体の中に何か恐ろしいものがある。

とにかく恐くてたまりませんでした。



翌日、とにかく病院で診てもらわねばと思ったので、

乳腺を診る先生の担当日ではありませんでしたが受診しました。



外来の看護師さんとその日の担当の先生に

「胸に何かがあるんです。」そう伝えると

先生達は胸の外側にデキモノでもあるのだと思っていたみたいでした。



でも診察室でよくよく話をすると、

先生達の表情がかわるのがわかりました。

まさか、若い私の胸の中に何かある。

その先生は自分が乳腺専門ではないことを私に告げ、

翌日の乳腺を診る先生の予約を取ってくれました。



そして翌日、再び受診しました。


たくさん患者さんが座っている中でポツリと1人。

座っているだけで何も考えていませんでした。

ボーッとただただ診察室に呼ばれる時を待っていました。




そして診察室に呼ばれ入りました。

自分で胸のしこりを見つけたことを伝えました。



さっそく乳腺エコーが始まりました。

上着と下着を脱いで診察台の上で横になる。

真っ暗な部屋の中で、私の胸の上をプローブが動く。

すごく長い時間のように感じました。



エコーが終わり服を直してイスに座ると

「良性である可能性は低いです。」

と先生は伝えてくださりました。



私がその言葉を聞いて何と答えたのか覚えていません。




「手術になるならどこの病院でしますか?

ここでもできますし、希望する病院があるなら紹介しますよ。」

といってくださったので、

「ここでお願いします‼」

と言ったことだけ覚えています。




先生が検査の準備をする間、待合室で待機していました。

外来の看護師さんがそっと近付いて肩をポンと触れて

「自分で見つけたん?」と一言。

看護師さんの顔を見たとたんに涙が溢れてきました。

「先生に任せたらいけるけん。心配せられん。」


これからどんなことが私を待ち受けているのか。

全く想像もつかなくて恐くて恐くて。


看護師さんが掛けてくれた言葉で決心がついたように思います。




再び診察室に呼ばれて細胞診を受けました。

胸の上から細い針を刺してしこりの細胞をとる検査でした。

不安が強かったので特に痛みは感じませんでした。

その後、マンモグラフィと採血。

そして手術の日を決めて、

それまでに必要な検査の予約をしました。




ちょうど私は職場の夏休みだったので、

25才の夏休みは全て検査で終わってしまいました…。

(トホホ…。)


                   (初診約2週間後のわたし。)

                     (ギャルではありません。)



初診の後、自分で運転をして自宅に帰りました。

全く運転中のことは覚えておらず、

病院を出てから次の記憶は家の玄関でした。



家に帰ったのは昼過ぎ。

夕方に近かったかもしれません。



「ただいまーー。」



普段なら部屋の中から「おかえり」と聞こえるのですが、

バタバタと足跡が聞こえて母が玄関まで走って来ました。


「あんた、なんて言われたんで‼」


と一言。

私は靴を脱ぎ部屋に入りながら

先生に言われた言葉をそのまま伝えました。

その言葉を口にしたとたん涙が溢れました。

母も泣いていました。




私は前日、母に胸にしこりがあること。

受診することを伝えていました。



私の帰りが遅い。連絡もない。

きっとずっとずっと不安な気持ちで

私の帰りを待っていてくれたんだと思います。

もしかすると私よりも不安だったのは母だったのかもしれません。



泣いている私に

「あんた、病院で同じ人を見てるんやろ?それやったらわかるやろ」



そうです。

私は看護師として働いていて乳がんの患者さんをケアしていました。

みんな手術、治療をして元気に退院していってます。

がんイコール死でないことは、誰よりも私がよく知っています。



母の言葉で、これから待っている検査や治療を乗り越えるぞ‼

って思うことができました。